一般的に脳頭蓋(頭)は大脳の発育過程と一致し、出生時にはおよそ60%完成しており、あとの40%は生後発育です。6歳までにその大きさと重量は成人の90%に達します。一方、顔面頭蓋(顔)については乳幼児期と思春期にスパートのある身長の発育過程と一致し、出生時には、せいぜい20~30%程度しか完成していません。したがって、残りの70~80%は生後発育となり、様々な環境の影響を大きく受けながら成長します。
ヒトの顎顔面骨格の生後発育の特徴
顎顔面部の大部分は、生後約10年をかけて成長します。顎顔面(70~80%)の生後発育は、歯の成長に伴う顎口腔系の機能的な変化により、その咬合機能の発達と適応は顎顔面の成長発育に大きな影響を与えます。
咬合平面と顎顔面骨格の成長
顎顔面の成長は、生後口腔内に生える歯に対して、神経筋に機能的に適応することによって発育します。生後発育の過程では、咬合高径が増加して咬合平面が次第にフラットに変化します。顎顔面の成長発育は、このような咬合高径と咬合平面の変化に対して適応していくことにより正常な形態と機能を獲得していきます。
顎顔面の成長とⅠ級関係(正常咬合)の獲得
6歳から14歳の顎顔面の発育、咬合平面(FH-OP)と下顎下縁平面(FH-MP)、上下顎の前後的位置関係(APDI)の成長に伴う変化を調べると、咬合平面(FH-OP) は年齢とともに減少し、同時に下顎平面(FH-MP) も減少する。これに伴って、APDI(PP-AB)は増加することから、現代人の正常な顎顔面の発育においては、歯列後方部の咬合高径が増加する傾向にあり、下顎は前方回転して咬合を適応させ、下顎下縁平面を減少させていることがわかります。このような下顎の適応によって、下顎は前方位を獲得して、骨格は次第にⅠ級となってきます。
歯の萌出に伴う咬合高径の増加と下顎の適応
顎顔面骨格の成長発育は、乳歯列の後方に永久歯の第一大臼歯が生え、それに伴い咬合平面は平坦化し、同時に後方臼歯部の高径が増加します。その結果、下顎は前方に回転して咬合を適応させ、さらに側方の永久歯が生える高径を獲得していきます。
顎顔面の成長発育における咬合高径と下顎の適応の原理
顎顔面骨格の成長発育において咬合平面は平坦化します。そして、このことは後方臼歯部における高径の増加を意味します。これに対し、下顎は前方に回転して咬合を適応させ、さらに二次的に下顎を成長させるので、下顎下縁平面角は持続的に減少します。同時に、下顎は前方に適応するので乳児期に後退していた下顎は次第に上顎とⅠ級関係になるように適応していきます。